「戦略は作った。でも動かない。」この言葉を、私はこれまで何度聞いてきたかわかりません。製造業の社長から、医療法人の理事長から、SaaS企業のCOOから。業種は違っても、問題の構造は驚くほど似ています。戦略が実行されない理由は、戦略の質にあることはほとんどありません。問題は、組織の意思決定の構造にあります。
「誰が決めるか」が決まっていない ¶
戦略書に書かれた施策が動き出さない最も多い理由は、「誰がその施策を実行する権限を持っているか」が明確でないことです。部門をまたぐ施策であれば特にそうです。A部門は「B部門の話だ」と思い、B部門は「経営判断が必要だ」と思う。その間に時間が過ぎていきます。戦略設計の段階で、施策ごとに意思決定者と実行責任者を明示することが、実行率を上げる最も単純な方法です。
戦略書が「読まれる形」になっていない ¶
100ページのスライドデッキは、分析の記録としては優れています。しかし、日常の意思決定の場で参照される形ではありません。会議室で5分で説明できるか。現場のリーダーがスマートフォンで確認できるか。この二つの条件を満たさない戦略書は、棚に収まります。Pine Vaultpathでは、すべての戦略成果物にA3一枚の要約版を添付することを2019年から標準としています。
実行の「最初の一歩」が大きすぎる ¶
戦略書に書かれた施策が「新規事業の立ち上げ」「組織の再編」「システムの刷新」といった大きな単位でしか記述されていない場合、現場は動き出せません。最初の一歩が大きすぎるのです。実行可能な戦略には、「今週中にできること」「今月中に決めること」「今四半期中に検証すること」という三つの時間軸での記述が必要です。
フォローアップの仕組みがない ¶
戦略書を納品して終わりにするコンサルタントが多い中で、Pine Vaultpathが納品後6ヶ月間の月次フォローアップを標準としているのは、この問題への直接的な対応です。月に一度、「先月何が動いて、何が動かなかったか」を確認するだけで、実行の速度は変わります。問題が起きてから対処するのではなく、問題が起きる前に兆候を捉える。それがフォローアップの本来の役割です。
戦略の実行率を上げるために必要なのは、より精緻な分析ではありません。「誰が、何を、いつまでに」という問いへの答えを、組織全体が共有できる形にすることです。その形を作る支援が、Pine Vaultpathの仕事の核心です。