従業員数が30名を超えたあたりから、多くの中小企業で「なぜか動きが鈍くなった」という感覚が生まれます。売上は伸びているのに、社内の摩擦が増えている。意思決定に時間がかかるようになった。優秀な人が辞め始めた。これらは別々の問題に見えますが、多くの場合、組織構造の歪みという一つの根に繋がっています。

歪み1:役割の重複と空白の共存

成長期の組織では、役割の定義が後追いになりがちです。「誰かがやっているはず」という仕事と、「誰もやっていない」仕事が同時に存在します。前者は摩擦を生み、後者は問題の見落としを生みます。この状態を可視化するには、業務の棚卸しと責任マトリクスの作成が有効です。ただし、この作業は「誰かの仕事を奪う」と受け取られやすいため、進め方に注意が必要です。

歪み2:意思決定が経営者に集中しすぎている

創業期に機能していた「経営者がすべてを決める」スタイルは、組織が大きくなると機能不全を起こします。経営者がボトルネックになり、現場の判断が止まります。この問題の解決策は、権限委譲の範囲を明示することです。「金額がいくら以下なら部門長が決めていい」「どの種類の採用なら現場リーダーが決めていい」という具体的な基準を設けることで、意思決定の流れが変わります。

歪み3:評価基準が行動を歪めている

「売上だけで評価される営業が、利益率の低い案件を取り続ける」「残業時間で評価される現場が、効率化を嫌がる」。評価基準が組織の行動を歪めている事例は、業種を問わず頻繁に見られます。評価制度の設計は人事の仕事と思われがちですが、実際には経営戦略と直結しています。何を評価するかは、何を大切にするかの宣言です。

組織の歪みは、放置すると複利で悪化します。しかし、構造を可視化して優先順位をつければ、比較的短期間で改善の手応えを感じることができます。まず現状の構造を図解することから始めることをお勧めします。